コンペティション概要

わたしたちの生活に欠かせない快適な環境を作る重要なアイテムである「くうき・みず・でんき」を有効に活用して建築設備の未来を創造しましょう。
そして建築設備が地球環境にやさしく、人々に幸せを与える未来のイノベーションを提案してください。

審査員(敬称略)

審査委員長
奥宮 正哉〈名古屋大学 名誉教授〉
審査員
黒田 慎二〈建築設備技術者協会 中部支部 支部長〉
閑林 憲之〈建築設備技術者協会 中部支部 副支部長〉
村上 正継〈建築設備技術者協会 中部支部 副支部長〉
河村 英之〈建築設備技術者協会 中部支部 理事〉
伊藤 嘉文〈建築設備技術者協会 中部支部 理事〉
服部  敦〈建築設備技術者協会 中部支部 理事〉

後援

(公社)空気調和・衛生工学会中部支部
(一社)電気設備学会中部支部
(一社)愛知県空調衛生工事業協会
(一社)愛知電業協会
(一社)静岡県設備設計協会
(一社)岐阜県設備設計事務所協会
(一社)三重県設備設計事務所協会
(一社)愛知県設備設計監理協会
※順不同

審査結果

優秀賞
Urban Enabling Resource Circulation
ーバイオガスと下水処理場を軸とした資源循環型都市の提案ー 

応募者(敬称略)

氏名 所属 学部・学科
森 琢人 名古屋⼤学⼤学院 環境学研究科 都市環境学専攻
石黒 雄大
今井田 美桜

作品に込めた思い

現代社会は⽂明や技術の発展に伴い、資源を⼤量⽣産・消費することで成り⽴ってきた。これらは私たちに豊かな⽣活をもたらしたが,次第に資源の枯渇や環境破壊・環境汚染、廃棄物処理場の不⾜といった問題が深刻となってきている。そこで本提案では、循環型社会の実現に向けて、都市で利⽤される資源を循環する仕組みづくりを⽬的とし、都市のスケールにスケールダウンし、検討を⾏った。

都市に不可⽋である電⼒や⽔、熱を、都市から排出される廃棄物や下⽔から⽣成し、都市の中で資源循環するシステムを提案する。 バイオガス発電を中⼼としたシステムを構築し、発電の燃料であるメタンを廃棄物のバイオガス化と、⽔、⼆酸化炭素と複合⾦属酸化物の反応の⽅法の2 つの⼿法を⽤いることで、脱炭素化へのポテンシャルが⾼く、持続可能な発電⽅法である。

この提案により、化⽯燃料の使⽤削減と廃棄物のリサイクルが図られ、⼆酸化炭素排出削減や有限な資源の枯渇防⽌、最終処分場の延命化が可能となる。それにより、地球と地球で暮らす私たちが今後もより良い環境で⽣活を送ることのできる社会になることを期待する。

作品講評

廃棄物からのバイオガスと、リチウム・ジルコニウム酸化物を触媒として製造したメタンによる発電を中心とした都市の資源循環の提案である。都市における脱炭素化手法の表現は的確であるが、一方で主題であるバイオガスと下水処理場を軸とした資源循環の説明、数値の根拠などを丁寧に示した効果試算を充実させれば提案に説得力が増したのではないかと考えられる。

優秀賞
持続可能な未来の創始者
〜豊田高専のエネルギー志向〜

応募者(敬称略)

氏名 所属 学部・学科
中山 成史 豊田工業高等専門学校 建築学科
澤田 拓磨

作品に込めた思い

豊田高専の寮では 600 名以上の学生が寮生活を送っており、老朽化の影響により現在寮の建て替えが行われています。また、この寮では日々多量の「でんき・みず・くうき」が使用されていますが、大勢の学生が一箇所に集中して暮らしていることや、学内に建設された寮の周辺にはプールや広大なグラウンド、食堂、お風呂、井戸などがあり、エネルギーの再利用を行うのに適した条件が整っています。こうした理由から私たちは豊田高専の寮に注目しました。

プールや井戸、食堂など、既にある設備の価値を見直すとともに、広大なグラウンドが寮の南側にあることで日射が何にも遮られないことなど、土地自体のポテンシャルを活かすことによって省エネかつ快適な住環境の実現を目指しました。

未来のエンジニアとなる学生たちが日々勉強に励む教育機関の寮において、環境への配慮と快適な居住環境の創出を両立させる取り組みは、環境問題への直近の対処だけでなく、将来の環境課題にも解決策を提供できる可能性を秘めていると考えています。

作品講評

学生寮を新設する計画を題材に、パッシブ手法による冷暖房負荷軽減、各種ヒートシンク・ソースや排熱の利用、太陽電池や太陽熱集熱による再生可能エネルギー利用、雨水利用、コンポスト利用などを組み合わせた提案であり、作品としてまとまっている。一方で冬季のヒートソースとしてのプール水の有効性、太陽電池設置の目的のみでの既存の寮建物の残置の妥当性について、さらに検討が望まれる。

優秀賞
未成年の主張!
「みんなの公園を取り戻そう計画!」

応募者(敬称略)

氏名 所属 学部・学科
尾崎 未侑 三重県立四日市工業高等学校 建築学科
鈴木 仁大

作品に込めた思い

私たちは今回が初めてのコンペだったので、入学してまだ4ヶ月ほどの私たちにできるかや、初めて使う道具などにとても不安でいっぱいでした。最初は何もかもが思い通りに行かず、要項を読むのも初めてなのでコンセプトを考えるのにもかなり苦戦しました。ですが、コンペを行なっていくうちに徐々にスキルがついていったり、どうしたら早くできるかなども段々とわかっていき、楽しくなってきました。

お互いの考えを共有したり、本当にこれでいいのかなど、コンペでしか味わえない経験を通して新たなものを得られたような気がします。また、今回のコンペでは、私たちが小さい頃に公園でボール遊びをしようと思っても、公園がボール禁止でとても悲しい思いをしたことがありました。さらに、真夏の暑い日は熱中症の恐れがあり、遊ぶどころじゃないこともありました。

みんなが遊ぶための公園なのに、みんなが遊べない悲しい思いしか生まない場所になっていると思いました。他にもいろんな思いや気持ちがあった中での作品なので、とても思いやりの気持ちを載せられた特別な作品だと私たちは思います。

作品講評

みんなが楽しい時間を過ごし、思い出を作ってきた公園が、熱中症、感染症、安全性などの制約から使いにくくなっている現状を打破するための公園でのいろいろな仕掛けを提案したものであり、現代の課題を的確にとらえ、提案技術(しかけ)も独創性のあるものである。今後さらに提案の効果を定量的に検証しながら設計レベルに進化させていくことが期待される。

佳作
ウォーターカーテンが拓く新たなる世界
〜持続可能な未来を描く、水と設備の融合〜

応募者(敬称略)

氏名 所属 学部・学科
坂 幸祐 中部大学 工学部 建築学科
嘉田 聖也
新海 歩武

作品に込めた思い

近年地球温暖化の影響により、気温上昇、ゲリラ豪雨が問題となっている。
気候変動の一環として、夏季の高温日数や熱帯夜の頻度が増加傾向にあり、住宅でも熱中症で倒れてしまうケースが多くなりつつある。そのため、住宅内でも、涼しい環境の確保が必要不可欠となった。現在では、エアコンの運用が主流となりつつあるが、風を浴びることで、風邪やのどの不調を引き起こすといった問題がある。

また、ゲリラ豪雨の増加に伴い、下水道管に流れ込む量が増加することによって、冠水や浸水が頻発するようになった。そのため、雨水流出対策は緊急の課題になりつつある。

この水の再利用を行い、建物内部への冷却効果を試みる。また、夏季だけではなく、冬季にも活用できるウォーターカーテンの住宅利用を提案する。 この提案により、夏季にしか日の目を浴びないウォーターカーテンを冬季の運用を目指す。しかし、冬季の運用はデメリットがあるため、夏季と同様に運用することができない。この点を改善しつつ、ウォーターカーテンのメリ ットを最大限活かすことで多くの普及が期待される。

作品講評

ゲリラ豪雨による「都市型洪水」のリスクを減らしつつ、雨水を利用して夏季の窓面からの負荷を低減するシステムの提案である。提案には冬季の効果も示されている。地球温暖化における豪雨と省エネルギーの両立の発想は評価できるが、窓のしくみ、窓開閉の有無などと提案のメリット・デメリットの関係、ゲリラ豪雨時のインフラの負荷軽減効果が示されていればさらに良い提案になったと考えられる。

佳作
Eco-Friendly Mall
ー次世代の環境を創造するー

応募者(敬称略)

氏名 所属 学部・学科
滝口 裕麻 愛知工業大学 工学部 電気学科 電気工学専攻
金原 伊吹
佐藤 心泉
米澤 旬平

作品に込めた思い

近年、CO2 の排出量増加に伴う地球温暖化の加速を受け、 世界全体で脱炭素に向けた取り組みが行われており、温室効果ガスを排出しない再生可能なエネルギー資源を最大限効率的に利用する必要性が高まっています。

本作品では、大型商業施設に着目し、「くうき・みず・でんき」について効率的・革新的な使い方を提案しました。太陽光発電を最大限活用できるような気候の土地で建物全体に発電ガラスを採用することで過度な森林伐採を極力抑えられると考えました。また、私たちが暮らす日本は多くの災害リスクを抱えています。災害が起こると電気や水の供給が止まり生活ができなくなることから、被害が大きくなったり復興が遅くなったりする可能性があります。そのような場合でも、設備を維持し避難所等として活用できるように、 EV や水素を利用した電力の貯蔵、空気からの水の生成などにより、災害レジリエンスの高い施設づくりを目指しました。

本コンペを通じて、私たちが環境問題や災害問題について知ることができたように、本作品を通じて、未来の環境について考えてくれる人が多くなっていくことを願っています。

作品講評

大型商業施設を対象に、シースルー型太陽電池、余剰電力による水素生成・利用、EV蓄電池利用、といったセクターカップリング、直流システムなどによる脱炭素とBCPの実現を目指した提案である。提案内容は実現性を含めて評価できるものである。一方で、BCP機能と郊外の施設のマッチングの説明、猛暑日に人が涼しさを求める施設としての機能の付加などがあるとさらに良い提案になったと考えられる。

佳作
未来の農業を拓く
エコフィルムで進化する電照菊栽培

応募者(敬称略)

氏名 所属 学部・学科
田代 悠人 名城大学 理工学部 建築学科 吉永研究室
安田 愛美
河合 健歩
藤原 采音

作品に込めた思い

農業において、農業従事者の高齢化と減少などの課題が散見されている。また、地球温暖化の進行により露地栽培における植物の葉焼け等の悪影響も懸念されている。

そこで私たちが着目したのがビニールハウスである。ビニールハウスは天候の影響を少なくし、育成環境の維持を可能にすることが出来る。しかし維持管理が難しい、ビニールハウス内の温度を保つために燃料を使用する等のデメリットも存在する。これらの特徴を最大限生かし、農家に負担が少なく環境負荷も少ない未来の環境を創造できるシステムを提案した。

本提案では、田原市の菊栽培ビニールハウスをモデルにビニールハウスに移動できる太陽光電池を設置した。

作品講評

菊栽培ビニールハウスをモデルにフィルム型ペロブスカイト太陽光電池を設置し、天候によって屋根面と壁面の間で移動できるようにして、ハウス内の環境制御とそのために必要なエネルギーの供給を行う提案である。対象の設定も妥当であり、発電量、電力消費量の試算もされており、よくまとまった提案であるが、可動部の詳細な説明やさらに将来を見据えた独創性が望まれる。

佳作
水と熱の輪
〜完全活用都市〜

応募者(敬称略)

氏名 所属 学部・学科
齊藤 晴 愛知工業大学 工学部 建築学科
長谷川 史華

作品に込めた思い

地球温暖化の進行により、地球環境はこれまでに類を見ない速度で変化している。世界的な気温上昇、異常乾燥による山火事の発生、頻発する集中豪雨やそれに伴う水害。我々人類は過酷な環境に対抗するために、柱を立て、壁を積み、屋根を架け、外界と内界を遮断し、内側の環境を整えることで快適性を生み出してきた。しかし、近年の異常気象に対抗するために内外を断絶する、という近年の手法を用いる場合、地球環境のさらなる悪化が懸念される。

そこで、建築物の内側ではなく、外側である都市を冷房する、という考え方に至ったものが本提案である。都市内部への熱の蓄積を抑制する都市構造の形成とともに、抑制しきれずに蓄積した自然熱や、既存空調から都市へ排出される熱を回収し、冷却する。回収した熱は、吸収式冷凍機の熱源とし、生成した冷熱は地域冷暖房として近隣建築物に供給することで、保有エネルギーを限界まで活用する。

従来、都市はエネルギーを消費して営みを生み出す場であった。これからの都市は、エネルギーをただ消費するのではなく、限界まで活用し、新たな営みを創造する場であることが要求される。

作品講評

風の道としての人工河川、水面からの蒸発効果、水路からの水による舗装面の冷却、排熱利用などによって都市を冷やそうという提案であり、根本からの居住環境改善、脱炭素化という重要な課題を扱っている。将来の都市での活動を基にした建物の高さや道路・人工河川の幅、水面からの蒸発効果、舗装面冷却装置のしくみ、排熱利用手段との温度レベルの整合性などのさらなる検討が望まれる。

奨励賞
視える設備!住む設備!
ー設備の大都市化ー

応募者(敬称略)

氏名 所属 学部・学科
熊田 知優 静岡文化芸術大学 デザイン学部 建築・環境領域

作品に込めた思い

「設備」は私たちの生活には必要不可欠で大切な存在です。しかし、現状では建物の見えない部分、あるいは道路の下など視えない部分に隠されてしまっています。そこで、「設備」を大々的に表舞台に出そうと考えました。

主に水道管をメインに都市を構成しています。また、この計画は下水処理が瞬時に行うことができることが大前提にあります。これにより、その場で使用した水がすぐ利用できることを活かして、農作物の栽培や、交通にも活用できます。

地球温暖化が進みいずれ日本が水の都になる可能性があるのでその場合の創造都市になっています。

作品講評

我々の生活に必要不可欠な都市インフラを視える化した都市の姿を、水道管をメインに示した提案である。発想と表現方法については評価できるが、発電、移動、食についての説明は断片的であり、表現されている部分の背景である未来の都市像、生活像などを示したうえで、今回の提案があればもっと夢のある提案になったのではないだろうか。

奨励賞
路面温度差発電
〜ヒートアイランド現象を利用した都市全体での発電〜

応募者(敬称略)

氏名 所属 学部・学科
中島 秀馬 中部大学 工学部 建築学科
白川 陸人
近藤 大斗

作品に込めた思い

この作品には、都市は今よりも働く人口が多くなると考えられ、ヒートアイランド現象を抑えることができないと感じたけれど、マイナスに捉えることなくこれからの社会に貢献していく者として改善案を考案したいという思いがある。

仮に実際に発電しようとするととても大規模なものであるが、都市のデメリットである部分を利用することで環境に悪影響を与えず電気を作り出すため、人々のためになってほしいと思っている。

作品講評

都市におけるヒートアイランド現象を緩和するために、路面と地中の温度差を利用した発電システムを提案したものであり、その着眼点を評価できる。一方で、高温側の路面・低温側の地中での熱交換によって取り出し可能温度、路面における採熱用の熱交換器設置方法、発電量の試算、提案システムの冬季の活用などについての検討があれば、さらに良い提案になったと考えられる。

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