コンペティション概要
わたしたちの生活に欠かせない「くうき・みず・でんき」を題材に、人の生活と未来との関わりを構想してください。ZEBやウェルネスが叫ばれるなか、今の技術にはない、地球にやさしく、人に幸せを与えるシステムのアイデアをお待ちしております。
このコンペでは縁の下の力持ちであるエンジニアリングの進化を大胆に予測し、今後の持続可能な社会に貢献する建築設備の未来像を創造してください。対象は建築だけでなく、コミュニティーや地域のインフラストラクチャも含めて考えてよいものとします。
なお、エンジニアリングは広く捉えていただいて構いません。
審査員(敬称略)
- 審査委員長
- 奥宮 正哉〈名古屋大学 名誉教授〉
- 審査員
- 黒田 慎二〈建築設備技術者協会 中部支部 支部長〉
閑林 憲之〈建築設備技術者協会 中部支部 副支部長〉
村上 正継〈建築設備技術者協会 中部支部 副支部長〉
伊藤 嘉文〈建築設備技術者協会 中部支部 理事〉
河村 英之〈建築設備技術者協会 中部支部 理事〉
服部 敦〈建築設備技術者協会 中部支部 理事〉
審査結果
応募者(敬称略)
氏名 | 所属 | 学部・学科 |
早矢仕 怜汰 | 岐阜工業高等専門学校 | 建築学科 |
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佐藤 梅香 | ||
棚橋 亮仁 |
作品に込めた思い
SDGsに世界的に取り組んでいる中、岐阜県の過疎化を感じている私たちにとっては、限界集落が取り残されている気がしてならない。誰一人として取り残さないことを目標とするSDGsの原則に重点を置き、限界集落と指定される岐阜県の東白川村を対象とした地域活性化を提案する。
私たちの目的は「限界集落をSDGsに先進的な村として活気を呼び戻す」ことにある。1つでもこの成功事例が生まれれば日本、世界がSDGsの取り組みの一環として限界集落の村おこしを認識することだろう。そしてこの提案がその1つの成功事例となることを願い具体的に東白川村をモデルにするのである。
目的の達成のためには、インフラの整備は必須である。東白川村の豊富な水源、高低差、林業、家庭ごみの自家焼却、下水汚泥の未処理などのエネルギー潜在資源をHarvestingし100%再生可能エネルギーを年間安定して供給するシステムを構成した。それに白川茶、東濃ひのきなどの地域特産品を関連付け村民の努力とリンクすることで村の知名度向上を図る。
作品講評
誰一人として取り残さないことを目標とするSDGsの原則に重点を置き、限界集落をエネルギー自給自足の先進的な村として活気を呼び戻すことを目指した提案である。対象地域で得られるバイオマスによる発電、熱生産、水資源エネルギーによる発電、太陽熱のエネルギー発生状況と収支が試算され、100%再生可能エネルギーによる限界集落の自立が描かれている。システムも整理されており、さらに人口密度の低い地域での送電、災害時の送電のためのドローンの活用なども含む優れた提案である。今後はさらに内容を精査するとともに、自助・共助・公助のような視点から誰がどのようにコスト分担をするのかなど経済的な視点も興味がもたれる。
山林を中心とした循環する村
応募者(敬称略)
氏名 | 所属 | 学部・学科 |
土田 干聖 | 名古屋大学大学院 | 都市環境学専攻 建築学コース |
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鈴木 遼平 | ||
八木田 悠希 | ||
清家 悠大 |
作品に込めた思い
国土の3分の2が森林である日本にとって、林業の衰退による増加する荒廃した放置林は解決するべき重要な課題の1つである
そこで本提案では、総面積の93%が森林である愛知県豊根村を対象に、持続的に山林を維持・管理することができる新しい林業と地方の形を目指した。そのために、木材をエネルギー資源としても活用して、地域全体のエネルギーを賄う自給自足型のエネルギーシステムを提案する。
この提案により、山林の維持・管理による地域内でのエネルギー経済環境の持続的循環が生み出される。さらに、手入れされた森林の増加によって、二酸化炭素吸収率の向上・土砂災害防止機能の回復・生態系の保全などが期待される。
また、将来的に日本全体へとこの新しい林業と地方の形を普及させることで、豊かな森林が日本全国へ広がるだけでなく、環境に配慮した建築の木質化による木材需要への対応、地方部の活性化や存続が期待される。
作品講評
総面積の93%が森林である愛知県豊根村を対象に、持続的に山林を維持・管理することができる新しい林業と地方の形を目指した提案である。輸入材増加による放置林増加、対象の村の現況をもとに、山林を活用し続け自立する村における森林活用による村の脱炭素化、村全体での木材の循環利用をステップを踏んで丁寧に検討しており、また具体的なシステムを示し実現性が感じられる優れた提案である。考え方そのものが先進的であると言えるが、さらに個々にも先進的な技術を組み込んでいくと良いのではないかと期待される。
人工光合成による
持続可能な社会の実現
応募者(敬称略)
氏名 | 所属 | 学部・学科 |
藤岡 優希 | 名城大学 | 理工学部 建築学科 |
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川﨑 丞 | ||
奥岡 倖大 | ||
田代 悠人 |
作品に込めた思い
SDGsを実現するためには再生可能エネルギーを用いた発電方法をより普及させる必要があります。その中で、立地条件の制限が少なく、普及しやすい発電方法である太陽光発電に注目すると、発電効率が低いだけでなく太陽光のすべての波長を活用できていないということが分かりました。
よってこの活用できていないエネルギーの有効な利用方法について焦点をあてディスカッションを続けていき、「人工光合成」という技術にたどり着きました。
人工光合成という技術はまだ開発段階ですが、この技術を今回提案した作品のように太陽光発電と融合して用いることで太陽光の更なる有効利用を実現することができると確信しています。
また、再生可能エネルギーを実用化、普及させるだけでなく、それによりいかに人々に幸せを与えることができるのかという点に注目するべきだと我々は考えています。人工光合成技術を用いることで、太陽光をプラスチック製品や農業肥料に変換し、生活をより豊かにできることを願ってこの作品を完成させました。
作品講評
太陽エネルギーの多くの波長域での利用を可能にすることを目的に光発電と人工光合成のハイブリッドシステムという独創的な提案である。人工光合成においてはプラスティックなどの原料になるオレフィンを生成でき、また同様の作用で液肥の作成することもできる。これらにより浜松市を対象に試算を行うとペットボトルとまた化学肥料も液肥で置き換えることができるとしており、大幅なCO2排出量削減につながる。一方、本提案で論点としている波長帯の比率とエネルギーの比率の違い、発電と光合成の波長域の重複の度合いなどをさらに精査することを期待する。
応募者(敬称略)
氏名 | 所属 | 学部・学科 |
長谷川 壮良 | 愛知工業大学 | 工学部 電気学科 電気工学専攻 |
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作品に込めた思い
近年、CO2の排出量増加に伴い、地球温暖化が懸念されています。化石燃料を使った発電により、大量の温室効果ガスが排出されるため、再生可能エネルギーによる発電が注目されています。
今回、再生可能エネルギーによる発電方法である「太陽光発電」に着目し、より多くの電気を作るにはどうしたらいいかを考え、あまり使われていない道路を太陽光パネル化することを思いつきました。
最近では、台風による被害として、令和元年9月に関東広域で約93万戸の停電が発生し、10月には東北地方から九州地方にかけて広範囲にわたって、合計約52万戸の停電が発生しました。このような災害による停電を防ぐには、各地域での発電による電気の自給自足が必要となります。道路の太陽光パネル化により、多くの電気が発電できるため、各家庭や交通インフラへ電気を供給でき、停電を防ぐことにも繋がります。
地球温暖化や停電によって苦しむ人がいなくなることを願います。
作品講評
「太陽光発電」に着目し、より多くの電気を得るために道路を太陽光パネル化することを提案したものであり、CO2排出量の削減とともに災害時に各家庭や交通インフラへ電気を供給でき、停電を防ぐことにも繋がることを目指した作品である。常時の発電電力の活用システム、災害時の電力供給能力と必要道路面積や可能性などについて、具体的また独自の提案があればさらに説得力が増したと思われる。
応募者(敬称略)
氏名 | 所属 | 学部・学科 |
鈴木 瑛海 | 愛知工業大学 | 工学部 建築学科 |
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熊田 光里 | ||
勝田 みのり | ||
森岡 愛 | ||
高木 緑 |
作品に込めた思い
人は住む場所の環境に寄り添い生活をしている。愛知県には山も平野もあり海にも接している。特に汚染が問題視される海に対して上手に寄り添い、生活できているのだろうか。幸せを海の水や海水による発電等の関わりで、作り出すことはできないだろうか。
そこで地球上での「みず」の約97%を占める海を題材に、海の汚れを改善させ、その汚染要因を利用して省エネに向けた取り組みが出来ないかと考えたのが本提案である。汚染要因であるゴミやヘドロを水圧や渡航する船といった海の要素を利用し、汚染要因の回収や発電に繋げる。
また、海と街との関わりを持たせる提案も行った。ゴミ拾いボランティアやゴミを使ったイベントを設けることで街で暮らす人々に環境問題を意識してもらい、海で作られたエネルギーを街灯や店舗で使用し、災害時に向け蓄電をすることで、街の人々にエネルギーを還元する。
8つの提案は小さな発想であるが合わせると水質汚濁の解決や発電、住民の幸せにつながると考える。
作品講評
海と上手に寄り添い幸せな生活を送ることを目指して、海の汚れを改善し、同時に汚染要因を利用してエネルギーを創り出し。これを街で常時・非常時に有効に活用することに至るための8つの方策を提案した作品である。丁寧な提案がとても評価できるが、一方でエネルギー収支などについてさらに精査していくことが望まれ、また提案内容をもう少し絞ってさらに尖った提案とすることも考えられる。
応募者(敬称略)
氏名 | 所属 | 学部・学科 |
野村 一郎 | 中部大学 | 工学部 建築学科 |
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大矢 晃聖 | ||
木村 亮太 | ||
黑田 凌章 |
作品に込めた思い
「地球にやさしい生活」とは何かを考えていく中で、私達は日本のエネルギーが諸外国と比較しても化石燃料への高い依存度が続いており、中でも温室効果ガス排出の大きい石炭の依存度が高いため地球に与える悪影響が大きいことに目をつけた。近年では電気の消費を抑えた家電や照明機器の導入や節電などで発電コストを抑えようと様々な対策が行われているが、再生可能エネルギーの比率が16%と低い水準にある上に天然資源が圧倒的に不足している日本は海外にエネルギーを依存せざるを得ない状況になっている。
そこで、私達は生活に欠かせない「でんき」を題材に自然災害から生み出される巨大な自然エネルギーを活用することで新たな再生可能エネルギーとして利用する方法を提案したい。全世界共通の災害に対するネガティブなイメージを地震大国である日本が先行して災害から生み出される自然エネルギーを新たな再生可能エネルギーとして利用する技術を開拓していくことで、温室効果ガス排出を抑えた「地球にやさしいエネルギー」というポジティブなイメージへと変換した日本の化石燃料依存の脱却につながるイノベーションへとなってほしい。
作品講評
日本では避けられない災害である地震のエネルギーを活用し電力を発生し、災害が持つネガティブなイメージをポジティブなイメージに変換しようという提案である。地震に着目したことはとても面白い発想であると思われる。一方で、エネルギー収支の検証、突発的に発生する電気エネルギーをどうようなシステムによって温室効果ガス排出抑制、すなわち常時のエネルギーとして活用するのかなどの検証がさらになされることが必要であると考えられる。
応募者(敬称略)
氏名 | 所属 | 学部・学科 |
林 志穂 | 名城大学 | 理工学部 建築学科 |
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山岡 莉子 | ||
濵崎 裕理 | ||
村下 和生 |
作品に込めた思い
近年、アマモは海洋資源の増加、海の水質浄化に加え、ブルーカーボンを蓄えるものとして地球温暖化を防ぐ役割があると期待されている。しかし、埋め立てや水質汚染によってその数は大きく減少している。また、再生活動は行われているが、アマモ場の回復に至ってはいない。それは、再生活動に多くの人出と労力が必要なことと、長期的なメリットはあるが短期的なメリットがないため活動者が増えないことが原因であると考えた。そこで、アマモの有効利用方法と活動の効率化を提案し、アマモ場拡大に向けた動きがさらに活発になる方法を提案する。
アマモ場再生から、水質向上だけでなく、船の燃料の産出という利点が生まれれば、より再生活動に取り組む人や地域が増え、カーボンニュートラルにつながる流れが形成されると考える。
作品講評
海洋生物によって大気中から海中に吸収される二酸化炭素由来の炭素であるブルーカーボンを蓄え、水質浄化にも寄与するブルーカーボン生態系の一つであるアマモに注目し、その活用と藻場「アマモ場」の再生活動の推進策を提案した作品である。対象を愛知県佐久島で平成13年からスタートしたアマモを増やして藻場を再生する運動とし、島外ボランティアの交通手段である船の燃料にアマモから生成するエタノールを利用する。CO2吸収効果についての定量的な検討、日本全体へ展開した場合のカーボンニュートラルに対する位置づけなどがわかるとさらに楽しい提案となるのではと思われる。
応募者(敬称略)
氏名 | 所属 | 学部・学科 |
坂井 健太 | 名城大学 | 理工学部 建築学科 |
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林 和哉 | ||
福嶌 康介 | ||
前田 航兵 |
作品に込めた思い
私たちが暮らしていくためには、くうき・みず・でんき、どれも必要不可欠な要素である。その中で飲料や洗浄、冷却といった様々な用途があるみずに着目した。
私たちが日々使用している水は、川や海から得た水を浄水場で安全なものにしてから使い、使い終われば下水処理場で適切に処理してから自然に返している。この過程には大量のエネルギーを使っている。そのためこの消費されるエネルギーをいかにして削減できるかが水をうまく使うための課題であると考える。
その1つの解決案として微生物燃料電池を用いた排水の浄化を提案する。各建物に微生物燃料電池を設置するだけで下水処理のエネルギーを低減でき、おまけに発電までしてくれる。そんな今あるエネルギーを無駄にしない一石二鳥の設備がこれから普及してくれるように願い、この案を提案します。
作品講評
微生物燃料電池を各住戸に設置することにより排水の浄化とともに発電を行い、排水処理に必要となるエネルギーを削減するとともに、創エネルギーを行うという提案である。水資源消費の削減も同時に検討している。その中で、雨水、井水などを含めて微生物発電を相性という観点からの優先順位の考え方の検討や、住宅の電力消費量と本提案システムの発電量のオーダーが異なる中での提案システムの位置づけの説明が必要であると思われる。